肝硬変について 過去問解説

臨床栄養学

肝硬変は推定患者数25万人から30万人で将来的には肝がんや肝不全へ移行する可能性のある疾患です。

また状況に応じて食事の制限等があるので国試でも疾患そのものを問うものや食事に関するもの等が出題されています。

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肝硬変とは?

肝臓の慢性的な炎症により次第に幹細胞の腺維化が起こることで肝臓本来の機能が果たせなくなること。

原因としては最も多いのが肝炎でウイルス性肝炎がやく65%以上が占めています。またアルコール性肝炎はやく18%です。

肝臓が悪いというとアルコールをイメージしがちですが

実は肝硬変はウイルス性の肝炎から発症する人の方が多い!

その他、非アルコール性や自己免疫疾患によって発症するケースもあります。

また肝硬変には

肝硬変には代償性と非代償性がある

この代償性と非代償性は肝硬変を学ぶ上では重要になります。

出題度

評価 :3/5。
第32回問130
第33回問128
第34回問112
過去5年分

ポイント

・まずは肝臓の働きを覚えよう!

肝臓はどのような働きする?主な働き

・たんぱく質の合成

・栄養の貯蔵

・アンモニアなどの有害物質の解毒

・胆汁の合成と分泌

・代償性と非代償性の違いを知ろう

肝機能自覚症状塩分制限
代償性何とか維持しているほぼなし7g~5g
非代償性機能していない浮腫、腹水、倦怠感、黄疸など7g以下

代償性は肝機能が何とか保っている(本当は異常があるにも関わらず機能できている状態)のため、自覚症状がほとんど見られない。

非代償性は肝機能が失われている状態であるため、体に様々な症状が出始める。

代償性においては自覚症状がほとんどないことから、肝硬変において出現する体の症状(主症状)を問う問題があれば、ほとんどが非代償性肝硬変の問題と言っても良いと思います。

では、過去問を解いていきましょう!

第32回 問130

問題

肝硬変の栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

(1)腹水がある場合には、エネルギー摂取量を制限する。

(2)食道静脈瘤がある場合には、亜鉛の摂取量を制限する。

(3)高アンモニア血症がある場合には、脂質の摂取量を制限する。

(4)低血糖がある場合には、ラクツロースを投与する。

(5)フィッシャー比低下がある場合には、分岐アミノ酸を投与する。

(解答) 5

フィッシャー比とは=分岐アミノ酸濃度/芳香族アミノ酸濃度のことで肝機能の指標などに用いられます。

フィッシャー比とは血液中に含まれる分岐アミノ酸と芳香族アミノ酸の比率を表し、肝機能に異常が起こると血液中の芳香族アミノ酸の量が増え、フィッシャー比が低下する

フィッシャー比が低下しているということは分岐アミノ酸が不足しているということなので

分岐アミノ酸を補わなければならない。(アミノ酸バランスを補充する)

また分岐アミノ酸を補充するすることにより、アンモニア代謝を改善させるため肝性脳症の予防にもなります。

※分岐アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)は筋肉で代謝するのに対し

芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン)は肝臓で代謝する

よって肝機能が低下すると芳香族アミノ酸の代謝異常が起こり分岐アミノ酸と芳香族アミノ酸の間でバランスが崩れる(このような場合でも分岐アミノ酸は代謝し続けるため)


(解説)

(1)腹水がある場合は塩分を制限する。

(2)亜鉛の制限をする必要はない。

(3)高アンモニア血症の場合はたんぱく質の制限をする。

(4)低血糖がある場合は糖質を補充する

第33回 問128

問題

非代償性肝硬変で上昇する項目である。正しいのはどれか。1つ選べ。

(1)血清総コレステロール値

(2)血中アンモニア値

(3)フィッシャー比

(4)血漿膠質浸透圧

(5)早朝空腹時の呼吸商

(解答)2

肝機能に異常があるためアンモニアが上手く代謝できずに血中アンモニア値がたかくなる


(解説)

(1)コレステロール値は肝機能の低下によりコレステロール合成が低下するため血清総コレステロール値は低下する。

(3)フィッシャー比は低下する

(4)血漿膠質浸透圧は低下する。(アルブミンの低下と門脈圧亢進によるため)

門脈圧亢進とは

肝臓に流入する血管の一つで門脈内の圧力が以上に上昇している状態のこと。

肝硬変の症状に見られ、門脈なら肝臓、そして心臓へと血液が上手く流れなくなる。

(5)呼吸商は低下する。

肝機能の低下による肝グリコーゲンの低下、インスリンの抵抗性により糖質の代謝が低下するため呼吸商は低下する。

第34回 問112

問題

代償性肝硬変患者の栄養モニタリング項目である。

最も適切なものはどれか。1つ選べ。

(1)肝性脳症の有無

(2)浮腫の有無

(3)筋肉量

(4)ウエスト/ヒップ比

(解答)3


(解説) 代償性肝硬変では肝機能の低下により、たんぱく質の合成能の低下がみられるため筋肉量の低下がみられる。

※この問題は「栄養モニタリング」を解く問題です。(設問に「栄養モニタリング」と書いてあります)

(1)、(2)は非代償性肝硬変で見られる症状です。

(5)はウエスト/ヒップ値に異常がある場合、腹水が考えられます。

腹水も非代償性肝硬変で見られる症状の上、腹水のモニタリングは画像でモニタリングすることが多いため「栄養モニタリング」には該当しないと考えられる

参考資料

冒頭の肝硬変の患者数に関して、日本消化器病学会・日本肝臓学会の資料より引用しています。

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