第37回 問6
(問題)
対象集団の有病率とスクリーニングの精度に関する記述である。
最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)有病率が高くなると、敏感度は低くなる。
(2)有病率が高くなると、特異度は高くなる。
(3)有病率が高くなると、偽陽性率は高くなる。
(4)有病率が低くなると、陽性反応的中度は低くなる。
(5)有病率が低くなると、陰性反応的中度は低くなる。
(解答)4
(解説)
(1) 有病率が高くなると敏感度は低くなる。
(2)有病率が低くなると特異度は高くなる。
(3)特異度が高くなると疑陽性率が低くなる
ROC曲線は縦軸が敏感度、横軸は(1-特異度)※疑陽性率である。
(5)有病率が低くなると陰性反応的中度は高くなる。
この記事はこんな人に向いてます
・管理栄養士国家試験の受験を考えている方
・管理栄養士国家試験の過去問を解きたい方
・スクリーニングのことについてもう一度確認をしておきたい方など
スクリーニングに関する過去問の出題度
第33回 | 問5 |
第35回 | 問5 |
第36回 | 問6 |
第37回 | 問6 |
過去5年のうち4問出題されています。
スクリーニングとは?
スクリーニングとは、「審査」「選考」「ふるい分け」といった意味で用いられる表現です。特定の条件などに照らして複数ある対象の中から条件に合致する対象を選別する、という動作をさします(実用日本語表現辞典より)

どういう時に使うの?

特定の疾病などに対し陽性、陰性などとふるい分けるのに使います
検査には時間と費用がかかります。
そのため、あらかじめスクリーニングを行うことで検査対象を絞ることができます。
またスクリーニングによって無症状の陽性者を見つけることも可能になり、
早期発見、早期治療につながります。
スクリーニングの関連過去問
第33回 問5
(問題)
疾病のスクリーニングに関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ROC曲線は、縦軸を敏感度、横軸を特異度として描く。
(2)疑陽性率は、敏感度を高くすれば低くなる。
(3)敏感度と特異度が一定の場合、陽性反応的中度は、有病率が高くなると低くなる。
(4)スクリーニング検査は、有病率が高い疾病に適している。
(5)スクリーニングは、疾病の診断を目的とする。
(解答)4
(解説)
(1)ROC曲線は縦軸を敏感度、横軸を疑陽性率(1-特異度)とする
(2)疑陽性率は敏感度を高くすれば高くなる。
(3)敏感度と特異度が一定の場合、陽性反応的中度は有病率が高くなると高くなる。
(5)スクリーニングはふるい分けに用いるので確定診断ではない。
第35回 問5
(問題)
疾病Aのスクリーニング検査の評価指標に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)敏感度は、検査で陽性である者のうち、疾病Aがある者の割合である。
(2)特異度は、検査で陰性である者のうち、疾病Aがないものの割合である。
(3)陽性反応的中度は、検査を行う集団における疾病Aの有病率の影響を受ける。
(4)カットオフ値を高くすれば、敏感度と特異度は高くなる。
(5)ROC曲線は、縦軸を敏感度、横軸を(1-疑陽性率)として描く。
(解答)3
(解説)
(1)敏感度は疾病Aがあるもののうち、検査で陽性となった割合
(2)特異度は疾病Aを持たない者のうち、検査で陰性となった割合
(4)敏感度と特異度はトレードオフの関係のため、どちらも高くなることはない。
(5)ROC曲線は縦軸を敏感度、横軸を疑陽性率(1-特異度)として描く。
第36回 問6
(問題)
疾病Aの有病率が10%である1,000人の集団を対象に疾病Aのスクリーニングテストを行った。疾病Aを有するもので陽性反応になったものは90人、疾病Aを有しないもので陰性反応になったものは720人となった。このスクリーニングテストの陽性反応的中度を求めた。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)0.10
(2)0.33
(3)0.67
(4)0.80
(5)0.90
(解答)2
(解説)
①まず問題文より全体の人数が1000人である
②問題文より疾病Aの有病率10%とあるので10%=100人が疾病Aを有する者にあたる。
③疾病Aを有するもの(100人)で陽性反応が出たのが90人となっている。この90人は真陽性
④残りの10人(100-90)は偽陰性
⑤問題文より疾病Aを有しないもので陰性反応になったものは720人となっているので、この720人は真陰性と呼ぶ。
なのでグラフにすると下記のようになる。
疾病Aあり | 疾病Aなし | 合計 | |
陽性反応あり | ③90 (真陽性) | ||
陽性反応なし (陰性) | ④10 (偽陰性) | ⑤720 (真陰性) | |
合計 | ②100 | ①1000 |
そこからさらに計算して空白を埋めていく
疾病Aあり | 疾病Aなし | 合計 | |
陽性反応あり | ③90 (真陽性) | 180 | ⑥270 |
陽性反応なし (陰性) | ④10 (偽陰性) | ⑤720 (真陰性) | 730 |
合計 | ②100 | 900 | ①1000 |
問題は陽性反応的中度を求めるので
陽性反応的中度=真陽性/検査で陽性となった人⑥
を置き換えると
陽性反応的中度=90/270=0.333333…..となるので答えは(2)になる。
用語解説
敏感度と特異度
敏感度は疾病Aを持つ人のうち検査で陽性となった人のことを表します。
第36回問6の解説の図を用いると以下のようになります。

図にある真陽性をAと仮定し、偽陰性をBとすると
敏感度=A/(A+B)
という式で敏感度を求めることができます。
また特異度は敏感度の逆で疾病Aを持たない人のうち、陰性となった人のことを表します。
トレードオフ
トレードオフと「両立できない関係性」のことをいい、
どちらか一方を得るとどちらかを失うことを表すときに用いられる。
ROC曲線はトレードオフの関係をグラフにしたものになります。
※ROC曲線は下の参考資料から見ることができます。
スクリーニングにおける敏感度と特異度はトレードオフの関係にあるため
敏感度が高くなれば特異度が低くなり、敏感度が低ければ特異度が高くなります。
陽性反応的中度とは
検査で陽性となったもののうち、実際に疾病を持っている者の割合

有病率が高いと陽性反応的中度は高くなる。
まとめ
・敏感度は疾病Aを持つ人のうち検査で陽性となった人
・特異度は疾病Aを持たない人のうち、実際に陰性だったひと
・陽性反応的中度は検査で陽性となった人のうち、疾病Aを持つ人
・敏感度と特異度はトレードオフの関係にあるため、どちらか一方が高くなるとどちらかが低くなる。
毎回似たような問題が出題されているので、敏感度や特異度といった言葉とその意味を理解しておきましょう!
参考資料
第37回管理栄養士国家試験の問題について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
日本疫学会 感度、特異度、ROC曲線 PowerPoint プレゼンテーション (jeaweb.jp)
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