第37回 問9
(問題)
循環器疾患の疫学に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)高血圧症のリスク因子として、カリウムの過剰摂取がある。
(2)脳梗塞のリスク因子として、血清総コレステロールの低値がある。
(3)虚血性心疾患のリスク因子として、血清LDLコレステロールの低値がある。
(4)健康日本21(第二次)では、脳血管疾患、虚血性心疾患のリスク因子として、高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病が挙げられる。
(5)最近10年間のわが国の虚血性心疾患による年齢調整死亡率は、米国よりも高い。
(解答)4
(解説)
(1)高血圧のリスク因子としてナトリウムの過剰摂取がある。
(2)脳梗塞のリスク因子とtして血清総コレステロールの高値がある。
(3)虚血性心疾患のリスク因子として血清LDLコレステロールの高値がある。
(5)最近10年間の虚血性心疾患による年齢調整死亡率は米国よりも低い
※参考資料※
この記事はこんな人に向いてます。
・管理栄養士国家試験を受ける人
・管理栄養士国家試験の過去問を解いてみたい人
・循環器疾患の過去問の解説を見たい人 など
循環器疾患に関する出題度
※このページは「社会・環境と健康」の分野から出題される循環器疾患の問題と過去問を記載してます。
第33回 | 問10 |
第34回 | 問8 |
第36回 | 問10 |
第37回 | 問9 |
※社会・環境と健康に関する循環器疾患の項目の出題のみ表示しています。
循環器疾患とは?
循環器疾患とは、血液を全身に循環させる心臓や血管などが正常に働かなくなることにより起こる疾患のことで、心疾患や脳血管疾患全般をいいます。
日本での死亡原因の内訳では悪性新生物の27.4%に次いで循環器疾患が23.2%の2位となっており、介護が必要となった主な原因では循環器疾患が1位で21.2%を占めています。
その循環器疾患の最も重要なリスク因子である高血圧は推定患者数が4300万人と言われており国民病の1つといえます。

4300万人というと日本人の3人に1人が高血圧の患者ということになります。
食生活や生活習慣、環境、ストレス、運動不足が主な原因と言われています。
また循環器疾患は世界でみても患者数が非常に多く、WHOによると2000年~2019年の「世界の死因トップ10」でも心臓病や脳卒中が含まれています。循環器疾患の患者の多さは日本だけに限った話ではないようです。
発症予防に対する目標(健康日本21より)
「健康日本21」より、循環器疾患及びそれに関連する重症化予防の目標値が以下の通りである。
設定値(2009年) | 目標値(2017年) | |
脳血管疾患の 年齢調整死亡率の減少(対10万人) | (男性)49.5% (女性)26.9% | (男性)41.6% (女性)24.7% |
虚血性心疾患の 年齢調整死亡率の減少(対10万人) | (男性)36.9% (女性)15.3% | (男性)31.8% (女性)13.7% |
高血圧の改善 | (男性)138mmHg (女性)133mmHg | (男性)134mmHg (女性)129mmHg |
脂質異常症の減少 | 総コレステロール 240mg/dl以上 の者の割合 男性 13.8% 女性 22.0% LDLコレステロール160mg/dl以上の者の割合 男性 8.3% 女性 11.7% | 総コレステロール240mg/dl 以上の者の割合 男性 10% 女性 17% LDLコレステロール160mg/dl以上の者の割合 男性 6.2% 女性 8.8% |
メタボリックシンドロームの該当者、 予備軍の減少 | 約1,400万人 | 平成20年度と比べて25%減少 |
特定健康診査実施率の向上 | 41.3% | 70%以上 |
特定保健指導の実施率 | 12.3% | 45%以上 |
上記のうち目標達成したのは、脳血管疾患・虚血性心疾患の年齢調整死亡率の減少(10万人当たり)である一方、メタボリックシンドロームの該当者および予備群の減少は悪化し、2019年度の最終評価では約1516万人するという結果になった。(健康日本21 最終評価より2022年10月)
循環器疾患に関する過去問
第33回 問10
(問題)
循環器疾患に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)喫煙は、くも膜下出血のリスク因子である。
(2)血清総コレステロール高値は、脳梗塞のリスク因子である。
(3)脳血管疾患の年齢調整死亡率は、女性の方が男性より高い。
(4)最近の脳血管疾患の年齢調整死亡率は、上昇傾向である。
(5)傷病分類別医科診療医療費は、呼吸器系の疾患よりも少ない。
(解答)1、2
(解説)
(3)脳血管疾患の年齢調整死亡率は男性の方が高い
(4)最近の脳血管疾患の年齢調整死亡率は、横ばい傾向にある。
(5)傷病分類別医療費は、呼吸器系疾患よりも高い。
傷病分類別医療費では循環器疾患が最も多く、次いで新生物(腫瘍)となっている。(R2年度)
第34回 問8
(問題)
最近のわが国の脳血管疾患の年齢調整死亡率に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)上昇傾向である。
(2)心疾患に比べて高い。
(3)男性の方が女性より低い。
(4)脳内出血は、1950年代に比べ低下している。
(5)くも膜下出血は脳内出血より高い。
(解答) 4
(解説)
(1)減少傾向にある。
(2)心疾患に比べて低い。
(3)男性の方が女性より高い
(5)くも膜下出血は脳出血よりも低い。
第36回 問10
(問題)
わが国の循環器疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)Ⅰ度高血圧は「収縮期血圧130-139mmHgかつ/または拡張期血圧80‐90mmHg」と定義されている。
(2)くも膜下出血は、脳内出血の1つである。
(3)最近10年間の死亡率は、脳内出血が脳梗塞を上回っている。
(4)糖尿病は、虚血性心疾患の危険因子である。
(5)non-HDLコレステロール低値は、虚血性心疾患の危険因子である。
(解答) 4
(解説)
(1)Ⅰ度高血圧症は「収縮期血圧が140-149mmHg、拡張期血圧が90-100mmHg」である。
(2)脳内出血は脳の内部から出血するものであり、クモ膜下出血は脳の表面から出血をする。
なので、クモ膜下出血は脳内出血ではない。
(3)脳内出血が脳梗塞を下回っている。
(5)non-HDLコレステロールとは総コレステロールから善玉コレステロール(HDL)を引いたもの。虚血性心疾患のリスク因子はnon-HDLコレステロール値が高い人である。
用語解説
心疾患とは?
心疾患とは心臓の疾患の総称で、虚血性心疾患や心不全、不整脈、先天性心疾患などが挙げられます。
心疾患の中でも最も多いのが「虚血性心疾患」で、心筋梗塞や狭心症など突然死の原因にもなります。
2020年度においては悪性新生物に次いで2位の死因となっており、脳血管疾患を合わせた3つの疾病を「3大死因」といいます。

また心疾患となる原因としては生活習慣によるものが多く、肥満や高血圧、脂質代謝異常などが挙げられます。
生活習慣病の関しては増加傾向になっているため、心疾患のリスクを伴う人も増加していくのではないかと思います。
脳血管疾患とは?
脳血管疾患は主に脳の血管が原因の疾患で、大きく分けて脳出血と脳梗塞の2つがあります。
脳出血はクモ膜下出血、脳内出血などをいい、脳梗塞は脳血栓や脳塞栓などを指す。
脳血管疾患は昭和40年代あたりをピークに減少傾向となっているものの、今現在において死因の第4位となっているため、まだまだ多いのが現状です。
ちなみに1位は悪性新生物、2位は心疾患、3位は老衰となっています。
ピーク時に比べると減少傾向にはなっているものの脳血管疾患も心疾患同様、生活習慣や食生活が起因となることが多いため運動をしたり塩分を控えるなど自らできることを積極的に行うことで予防が可能になります。
脳血管疾患と脳卒中の違い
脳血管疾患を指す言葉として「脳卒中」という言葉が使われることがあります。
脳卒中は脳に何らかのアクシデントが発生し、それによって意識を失うなどの状態を指します。
主に脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などです。
脳血管疾患は上記の脳卒中に加えた脳疾患の総称を指します。
まとめ
・循環器疾患は死亡原因では2位、介護をする原因となった疾患では1位である。
・健康日本21の目標において、脳血管疾患、虚血性心疾患の年齢調整死亡率の減少したものの、
メタボリックシンドロームの該当者および予備群の減少は悪化した。
・コレステロールの高値や高血圧は循環器疾患のリスク因子である。
・高血圧を予防することが循環器疾患を防ぐことにつながる。

循環器疾患につながる高血圧やコレステロールの高値などは
食生活と深い関わりを持ちます。
食生活の改善が大きな課題になりそうです。
参考資料
第37回管理栄養士国家試験の問題について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
厚生労働省:心疾患ー脳血管疾患死亡統計の概況 人口動態統計特殊報告 (mhlw.go.jp)
厚生労働省 令和2(2020)年度 国民医療費の概況 data.pdf (mhlw.go.jp)
厚生労働省 循環器病対策の現状等について 000585305.pdf (mhlw.go.jp)
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