第37回管理栄養士国家試験 問39

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

(問題)

25歳、女性。易疲労感があり来院した。血液検査結果でWBC1,060/μL、RBC186万/μL、Hb5.8g/dL、血小板8万/μL、網赤血球1%(基準値2~27%)、MCV91.3fL (基準値80~98fL)、MCH31.1pg(基準値28~32)、MCHC34.1%(基準値30~36%)、Cr0.6mg/dL、総ビリルビン0.3mg/dLであった。考えられる疾患として最も適切なのはどれか。

(1)鉄欠乏性貧血

(2)ビタミンB12欠乏性貧血

(3)再生不良性貧血

(4)溶血性貧血

3

過去5年間の過去問において、「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち」の分野からこのような形式の問題はなかったように思います。

問題を見ると、女性の血液結果からどの貧血なのか?を読み取らなくてはならないようです。

ではどの部分を読み取れば良いのでしょうか。

・血液検査の各項目の内容を理解する

・基準値及び結果によって出た数値が多いのか低いのかを読み取る

・貧血の種類 症状を理解する

この3つを理解できれば問題は解けそうですね。

いきなり問題の難易度があがった気がします(汗)

まず血液検査の各項目の内容を理解する部分についてですが、問題文より

血液検査結果でWBC1,060/μL、RBC186万/μL、Hb5.8g/dL、血小板8万/μL、網赤血球1%(基準値2~27%)、MCV91.3fL (基準値80~98fL)、MCH31.1pg(基準値28~32)、MCHC34.1%(基準値30~36%)、Cr0.6mg/dL、総ビリルビン0.3mg/dLであった。

とあるので、一つずつ見ていきましょう。

平均値患者の数値
WBC白血球数3500~9000/μL1060/μL
RBC赤血球数370~540万186万/μL
Hbヘモグロビン量12~18g/dL5.8g/dL
血小板15~45万/μL8万/μL
網赤血球2~27%1%
MCV平均赤血球容積80~98fL91.3fL
MCH平均せ血球ヘモグロビン量28~31pg31.1pg
MCHC平均赤血球ヘモグロビン濃度30~36%34.1%
Cr血清クレアチニン1.2mg以下0.6mg
総ビリルビン0.2~1.2mg0.3mg
※WBC、RBC、Hb、Crは男女別で基準値が違いますが、図の平均値は男女合わせた平均値のおおよその数値です。

上の表より

WBC、RBC、Hb、血小板、網赤血球が基準値よりも低い

MCV、MCH、MCHCが基準値内にあること

ということが分かります。

MCV、MCH、MCHCに関しては問題文の中に丁寧に基準値まで書いてくれています。(←ここ大事!)

ではWBC、RBC、Hb、血小板、網赤血球が低いことから何が読み取れるのでしょうか?

問題文の選択肢にある(1)鉄欠乏性貧血、(2)ビタミンB12欠乏性貧血、(4)溶血性貧血の3つについては血液ができる過程、又はできた後に問題が生じて起こる貧血です。

・まず鉄欠乏性貧血の場合、血液を作る機能には問題はないけど鉄分の不足によりヘモグロビンの合成に問題が生じ、赤血球が小さく色素の薄い赤血球ができる貧血です。(小球性低色素性貧血)

・次にビタミンB12欠乏性貧血は、胃の切除などでビタミンB12の吸収が難しくなって起こる貧血です。ビタミンB12が欠乏すると未熟な形態の巨赤芽球ができます。巨赤芽球のほとんどは成熟することができず骨髄内でアポトーシスを起こし、その結果成熟した赤血球が減少し貧血となります。(大球性正色素性貧血)

・溶血性貧血はスポーツ性貧血とも呼ばれており、赤血球の破壊亢進によって起こる貧血のことです。

以上のことから鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏性貧血、溶血性貧血のいずれも赤血球に問題がある貧血ということが分かります。

この問題にある患者の血液検査の数値は赤血球以外にも白血球や血小板などの数値も基準値を下回っていること、ただし赤血球の形や色素に問題はないこと(MCV、MCH、MCHCが基準値にある)から血液を作るそのものに問題があると疑って良いと思います。

したがって答えは(3)の再生不良性貧血となります。

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さいごに

貧血の問題はほぼ毎年出題されています。

血液検査の結果から読み解く問題が出ると検査項目のすべてを把握していなくてはならないのではないか・・・と焦るかもしれません。

この問題ではMCV、MCH、MCHCの基準値が問題文の中に書かれています。

その基準値が大きなヒントとなっていることが分かれば、より早く問題が解けると思います。

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