
給食や大量調理に関わる人は特に食中毒の種類や対応策は知っておくべき知識です。
過去問を通してしっかりと学んでいきましょう!
出題度
第32回 | 57問 |
第33回 | 55問、56問 |
第34回 | 55問、56問 |
第35回 | 53問、54問 |
第36回 | 52問、53問 |
過去5年間でみると毎年出題されています。
それだけ重要な問題であるということが推測されます。
では食中毒とは?
食中毒とは、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス、有害な物質がついた食べ物を食べることによって、下痢や腹痛、発熱、吐き気などの症状がでる病気のことです。
食中毒の原因によって、病気の症状や食べてから病気になるまでの時間は様々です。
時には命にもかかわるとても怖い病気です。
農林水産省HP 子供の食育より引用
出題ポイント
- 食中毒の種類と潜伏期間
- 発症原因の食べ物、発症時の症状
- 予防方法

食中毒の基本的なところを理解したら過去問に挑戦していきましょう!
第32回 問57
問題
カンピロバクターとそれによる食中毒に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)潜伏期間は、サルモネラ菌より短い。
(2)大気中で増殖する。
(3)耐熱性エンテロトキシンを産生する。
(4)芽胞を形成する。
(5)人畜共通感染症の原因菌である。
(正解) 5
(解説) 人畜共通感染症とは「脊椎動物と人との間で自然に移行するすべての病気又は感染」のことをさします。参考書等によっては「人獣共通感染症」と書かれているものもあります。
カンピロバクターは主に汚染された鶏肉を介して発症し、細菌性食中毒の中でも最も発症数の多い感染症の一つです。
(その他解説)
(1)の潜伏期間はサルモネラ菌は6時間から48時間に対してカンピロバクターは2日から7日なのでカンピロバクターの方が長い。
(2)サルモネラ菌は細胞内に侵入するので大気中で増殖はしない。
(3)エンテロトキシンを産生するのは黄色ブドウ球菌
(4)芽胞は形成しない。芽胞はウェルシュ菌やボツリヌス菌など。
第33回 問55
問題
細菌性およびウイルス性食中毒に関する問題である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ウェルシュ菌は、通性嫌気性芽胞菌である。
(2)黄色ブドウ球菌の毒素は、煮沸処理では失活しない。
(3)サルモネラ菌による食中毒の潜伏期間は、5~10日程度である。
(4)ノロウイルスは、乾物からは感染しない。
(5)カンピロバクターは、海産魚介類の生食から感染する場合が多い。
(正解)2
(解説)黄色ブドウ球菌はエンテロトキシンという毒素を産生します。エンテロトキシンは耐熱性のため、煮沸処理では失活しません。
(その他解説)
(1)ウェルシュ菌は偏性嫌気性菌です。
(3)サルモネラ菌の潜伏期間は6時間~48時間
(4)ノロウイルスは乾物からでも感染します。
(5)カンピロバクターの主な感染源は生肉によるものです。
(4)の問題にある乾物からの感染については、
2017年に多くの学校や事業所で発生した「きざみのり」によるノロウイルス食中毒事件をもとに設問されたのかなと思いました。
刻み海苔を介した大規模ノロウイルス食中毒事件から学ぶ(1) ~ウイルスによる分散型広域食中毒~|MHCL WORKS LABO
これまでノロウイルスというと「牡蠣などの2枚貝」といったイメージが強かったので、刻みのりから発症した集団食中毒はとても印象深い事件だったとともに、改めてノロウイルスの危険性を知るきっかけになりました。
第33回 問56
問題
腸管出血性大腸菌による食中毒に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)少量の菌数でも感染する。
(2)毒素は、テトロドトキシンである。
(3)潜伏期間は、2~10日程度である。
(4)主な症状は、腹痛と血便である。
(5)溶血性尿毒症症候群(HUS)に移行する場合がある。
(解答) 2
(解説) テトロドトキシンは「フグ毒」でフグの肝臓や卵巣などに含まれています。
なので、フグを調理する際には「ふぐ調理師」の免許を取得した人しかできません。
第34回 問55
問題
食中毒の原因となる細菌およびウイルスに関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)リステリア菌は、プロセスチーズから感染しやすい。
(2)サルモネラ菌は、偏性嫌気性菌の細菌である。
(3)黄色ブドウ球菌は、7.5%の食塩水中で増殖する。
(4)ボツリヌス菌の毒素は、100℃、30分の加熱で失活しない。
(5)ノロウイルスは、牡蠣の中腸腺で増殖する。
(解答) 3
(解説)
(1)のリステリア菌はナチュラルチーズなどから感染しやすい。

プロセスチーズはナチュラルチーズを加熱して加工してできます!
リステリア菌は加熱に弱い!だから加熱して加工するプロセスチーズで
リステリア菌は生きることができない。
(2)サルモネラ菌は、通性嫌気性菌です。
(4)ボツリヌス菌は80℃、30分で失活します。
(5)ノロウイルスは人の細胞(腸管内)で増殖します
第34回 問56
問題
自然毒食中毒と、その原因となる毒素の組み合わせである。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)下痢性貝毒による食中毒ーテトロドトキシン
(2)シガテラ毒による食中毒ーリナマリン
(3)スイセンによる食中毒ーイボテン酸
(4)イヌサフランによる食中毒ーソラニン
(5)ツキヨタケによる食中毒ーイルジンS
(正解) 5
(解説)
(1)下痢性貝毒による食中毒はムラサキガイやホタテガイなど。テトロドトキシンはフグ毒
(2)シガテラ毒は南海に生息する魚の筋肉や内臓に蓄積するシガトキシンなどの天然毒によっておこる食中毒。リナマリンはキャッサバなどに含まれる青酸配糖体
(3)スイセンによる食中毒はリコリンなどで、イボテン酸はイボテングタケなどのキノコに含まれる毒成分
(4)イヌサフランによる食中毒は「コルヒチン」によるもの。ソラニンはじゃがいもの発芽部位にある天然毒のこと
第35回 問53
問題
細菌性食中毒に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)サルモネラ菌は、神経性の毒素である。
(2)黄色ブドウ球菌による食中毒の潜伏期間は、2~7日間である。
(3)ウェルシュ菌による食中毒の主症状は、血便である。
(4)カンピロバクター感染症は、ギランバレー症候群の原因となる。
(5)腸管出血性大腸菌は、100℃3分間の煮沸では殺菌できない。
(正解)4
(解答)
(1)サルモネラ菌は、神経性の毒素は持たない。神経性の毒素を持つのはボツリヌス菌である。
(2)黄色ブドウ球菌の潜伏期間は、1時間~6時間
(3)ウェルシュ菌による主症状は腹痛と水溶性下痢である。
(5)腸管出血性大腸菌は75℃以上1分間の加熱で殺菌することができる。なので100℃で3分以上であれば十分に殺菌ができている。
第35回 問54
問題
ノロウイルスとそれによる食中毒に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)数十から数百個のウイルス量でかんせんする。
(2)食中毒が多く発生する時期は、夏季である。
(3)ヒトからヒトへは感染しない
(4)食中毒の予防には、75℃1分間の加熱が推奨されている。
(5)主に2枚貝の貝柱に濃縮されている。
(正解) 1
(解説)
(2)ノロウイルスが多く発生する時期は冬季である。
(3)ヒトからヒトへの感染は認められる。
(4)75℃1分間の加熱腸管出血性大腸菌の殺菌の目安で、ノロウイルスでは85℃~90℃で90秒以上の加熱を推奨している。
ポイント
75℃1分間の加熱は腸管出血性大腸菌(o-157)
85℃~90℃、90秒以上の加熱はノロウイルス
(5)二枚貝の中腸腺に濃縮されている。
第36回 問52
問題
ボツリヌス菌とそれによる食中毒に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ
(1)通性嫌気性の細菌である。
(2)高圧蒸気による120℃20分間の加熱で死滅しない。
(3)主な感染源は生鮮魚介類である。
(4)潜伏期間は、一般に10日程度である。
(5)毒素は、末梢神経を麻痺させる。
(解答)5
(解説)
(1)ボツリヌス菌は偏性嫌気性菌である。
(2)加熱による予防は有効
(3)主な感染源は缶詰やハチミツなど
(4)潜伏期間は12時間~36時間
第36回 問53
問題
細菌性およびウイルス性食中毒に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)カンピロバクターは、鶏の消化管内には生息しない
(2)エルシニア・エンテロコリチカは、5℃で増殖できない。
(3)黄色ブドウ球菌の毒素は、煮沸で容易に不活化される。
(4)ノロウイルスは、60℃30分間の加熱で容易に不活化する。
(5)E型肝炎ウイルスは、野生のシカの肉を生食することで感染する。
(解答)5
(解説)
(1)カンピロバクターは鶏の消化管内で生息している。
(2)エルシニア・エンテロコリチカは5℃でも生息は可能である。
※エルシニア・エンテロコリチカとは※※
豚、犬、猫などの腸管や自然環境中に存在する細菌
動物の糞などに汚染された食肉や水を介して発症する。また0℃~4℃といった低温でも発育する。
(3)黄色ブドウ球菌は耐熱性のため、煮沸で失活しない。
(4)ノロウイルスは85℃~90℃で90秒以上加熱する。
まとめ
食中毒の種類や毒素、予防方法、発症した時の症状、潜伏期間など幅広く出題されています。
また食中毒は安心・安全な「食」を提供するうえで、必ず防いでいかなくてはならないものです。
毎年出題されている内容なので、国試で点数を取るうえでも重要な項目です。しっかり把握しておいた方が良いと思います。
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