がん患者 【臨床栄養学より】

管理栄養士国家試験

臨床栄養学の項目から出題されている「がん患者」についての過去問解説です。

社会・環境と健康の項目において出題されているがんについては、がんの関連法規やがんの部位別の罹患者の推移などが出題されていましたが

臨床栄養学からはがん患者の身体的症状などが中心となります。

まずはがんとはどのようなものなのか、またがんに関する過去問、解説を解いていきたいと思います。

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がんとは?

一般的に言われる「がん」は「悪性新生物」とも呼ばれ、悪性腫瘍のことをいいます。

悪性腫瘍は遺伝子の突然変異によって起こるものでその突然変異したものが、細胞分裂をしながら無制限に増殖し組織を破壊、血液やリンパなどを介して体内のあらゆることろへ転移し全身に広げていきます。

主な発生要因

主な要因として

・喫煙  (肺がんのリスク上昇)

・飲酒  (咽頭がん、口腔がん、肝がんのリスク上昇)

・食生活の乱れ (胃がん、大腸がんのリスク上昇)

・感染によるもの  (B型・C型肝炎ウイルスによる肝がん、ヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんなど)

近年では2人に1人が一生涯でがんになると言われるほど身近な病気となっています。

日頃の生活習慣からくるものが多く、ストレスが要因となるものもあります。

また食生活の変化に伴い、50年ほど前では発症が少なかった大腸がんが上昇傾向となるなど

時代の変化に応じてがんの発症も変化してきています。

治療法は?

治療法は主に

・外科手術

・放射線治療

・抗がん剤治療

・薬物療法

などが挙げられます。

またこれらはがんの種類や進行状況によって医師と相談の上決めていくことがほとんどです。

出題度

評価 :3/5。
第32回問139
第35回問133
第36回問133
第32回~第36回分より

過去5年間において3問出題されています。

※社会・環境と健康の方で出題されている「がん」についてはこちらから

がん 【社会・環境と健康】 | 働きながら管理栄養士を取るブログ (mii-kanrieiyoushi.com)

それでは過去問を解いていきましょう!

第32回 問139

(問題)

がん患者の栄養管理に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。

(1)化学療法では、悪心が出現する。

(2)放射線療法では、食欲不振がみられる。

(3)外科療法では、低栄養のリスクがある。

(4)がん悪液質では、徐脂肪体重が減少する。

(5)早期がん患者は、緩和ケアの対象にならない。

(解答)5


(解説)

早期がん患者であっても緩和ケアの対象になる。緩和ケアは末期患者だけが対象ではない。

第35回 問133

(問題)

がん患者の病態と栄養管理に関する記述である。

最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)悪液質では、筋たんぱく質の同化が優位になる。

(2)化学療法施行時には、食欲が増進する。

(3)胃切除術後は、カルシウムの吸収が亢進する。

(4)上行結腸にストマ(人工肛門)を造設した後は、脱水に注意する。

(5)終末期には、経口摂取は禁忌である。

(解答) 4

ストマを造設すると水様性の便が排泄されるため脱水が起きやすい。


(解説)

(1)悪液質では、筋たんぱく質の異化が優位になる。

(2)化学療法施行時には、食欲が低下する。

(3)胃切除術後は、カルシウムの吸収が抑制される

(5)終末期であっても経口摂取が可能であれば摂取できる。

第36回 問133

(問題)

がん患者の病態と栄養管理に関する記述である。

最も適当なのはどれか。1つ選べ。

(1)悪液質では、食欲が亢進する。

(2)悪液質では、徐脂肪体重が増加する。

(3)不可逆的悪液質では、30~40kcal/㎏標準体重/日 のエネルギー投与が必要である。

(4)がんと診断された時から、緩和ケアを開始する。

(5)緩和ケアでは、心理社会的問題を扱わない。

(解答)4


(解説)

(1)悪液質では食欲が低下する。

(2)悪液質では、骨格筋量が減少する。

(3)不可逆的悪液質とは、栄養投与に反応しない状態であり、栄養投与を行っても改善が見られない場合のことを指す。この場合は栄養量を減らしていくことが望ましいとされる。

(5)緩和ケアでは、心理社会的問題を扱う。

用語解説など

悪心とは

悪心は嘔吐の前兆。吐き気のこと

がん患者の約40%~70%近くに見られる症状です。

主にがんに用いる薬や抗がん剤、手術などによって起こる場合や、ストレスやがんが脳や消化器に影響を与えることで起こる悪心もあります。

悪心が起こると食欲の低下や栄養状態の低下につながり全身の状態をさらに悪化させてしまいます。

悪液質とは

悪液質とはがん患者の多くに見られる症状の一つで、栄養不良により衰弱した状態を指します。

飢餓の場合では体重や脂肪が減少しても骨格筋量はほとんど維持できているにも関わらず、悪液質の場合では骨格筋量も減少していきます。

また飢餓の場合では安静時のエネルギー代謝は減少しますが、悪液質ではエネルギー代謝が亢進します。

体重の減少や、骨格筋量の減少、また食欲不振などの症状が続くとQOLそのものが低下していきます。

緩和ケア

がんによる「緩和ケア」とは

緩和ケアの定義

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者さんとそのご家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、QOLを改善するアプローチである。

(WHOの緩和ケアの定義 2020年より)

すなわち患者の不安を早期に改善していくことを目的としている。

また主に患者が不安とする内容を上げるとすると以下の通りである。

・がんによる痛みなどの症状

・気分の落ち込みなどの精神的苦痛

・医療費などの問題

・治療への不安

・生死にかかわることへの不安

緩和ケアはがんと診断された時から行う身体的・精神的なケアであり

症状の進行状況に関わらず、対象はすべてのがん患者にあたります。

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