国試では「がん」の項目について、主に「社会・環境と健康」と「臨床栄養学」の2つから出題されています。
今回は社会・環境と健康から出題されていたがんの内容と過去問について解説していきます。
社会・環境と健康で出題される「がん」について
「社会・環境と健康」から出題されるがんの項目は、がんに関連する法律や政策、各部位の罹患率などが中心となっています。
出題度
第32回 | 問9 |
第34回 | 問3 |
第35回 | 問9 |
過去5年分のうち3問出題されています。
臨床栄養学の分野でも「がん」について出題されているので、両方合わせると「がん」に関連した問題はほぼ毎年出題されているといっても良いかもしれません。
出題ポイント
それぞれのがんの種類別で罹患率が上昇傾向にあるものと下降傾向にあるものを把握すること。
がんに関する国の機関や放棄なども抑えておくと良いでしょう。

では過去問を解いていきましょう!
第32回 問9
問題
ウイルス対策が重要とされているがんである。正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)肝がん
(2)子宮体がん
(3)胃がん
(4)成人T細胞白血球
(5)乳がん
(正解) 1と4
(解説)
(1)の肝がんはC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスなどが主な原因とされています。
(4)の成人T細胞白血球は「成人T細胞白血病リンパ腫」と呼ばれるものでヒトT細胞白血病ウイルス1型というウイルスによっておこる病気です。
ヒトT細胞白血病ウイルスが白血球の1つであるT細胞に感染し、がん化させます。
但し、このウイルスに感染した人すべてが必ずしも発症するわけではありません。
第34回 問3
問題
図は女性の部位別悪性新生物の年齢調整死亡率の経年変化を示している。①~④に当てはまる部位として正しい組み合わせはどれか。1つ選べ。

① | ② | ③ | ④ | |
(1) | 胃 | 大腸 | 乳房 | 子宮 |
(2) | 胃 | 乳房 | 子宮 | 大腸 |
(3) | 胃 | 子宮 | 大腸 | 乳房 |
(4) | 大腸 | 胃 | 乳房 | 子宮 |
(5) | 大腸 | 子宮 | 胃 | 乳房 |
(解答) 3
(解説)
近年の動き | 原因とされているもの | |
胃がん | 下降傾向 | 食生活の改善・ピロリ菌の減少 |
子宮がん | 下降傾向 | |
大腸がん | 上昇傾向 | 食生活・ストレス・飲酒・喫煙 |
乳房がん | 上昇傾向 | ライフスタイルの変化など |
乳がんの項目のライフスタイルの変化とは食生活や初潮の低年齢化、第1子出産の高年齢化などを指摘しています。
また乳がんは今では15~16人に1人の割合で発症すると言われているにも関わらず、日本の乳がん検診の受診率は約44.9%にとどまっています。
ちなみにアメリカでは乳がんの罹患率が高く、8~9人に1人の割合で発症していると言われています。
ただ、乳がん検診自体も約80%の人が受診しており日本に比べて乳がんや乳がん検診への関心が高いように思います。
また子宮頸がんに関しては「ヒトパピローマウイルスワクチン」の接種が進んでいるので、さらに今後は減少傾向となるかもしれません。
第35回 問9
問題
乳がんに関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ
(1)わが国の女性の最近5年間の年齢調整死亡率は、胃がんより低い
(2)授乳は、発症リスクを高める。
(3)主な発症要因として、ウイルス感染がある。
(4)法に基づく市町村事業としての検診では、20歳以上を対象とする。
(5)法に基づく市町村事業としての検診では、マンモグラフィが推奨されている。
(解答) 5
(解説)
(1)過去5年間において胃がんよりも年齢調整死亡率は高い
(2)授乳は発症リスクを下げる
(3)ウイルスによるものではない。食生活や初潮から第1子出産までの期間が長いなどのライフスタイルの変化によるものと言われています。
(4)40歳からが対象です。
さいごに
がん5年生存率
がんと診断された場合、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標として「ガン5年生存率」があります。
・2019年、新たに診断されたがんは約999,000例(男性 約566,000例、女性 約433,000例)
・2021年にがんで死亡した人は約381,000人
・2009年~2011年にがんと診断された人の5年生存率 約64.1%
主な5年生存率
前立腺 | 95.1% |
乳 | 91.6% |
子宮体 | 83.0% |
腎 | 81.6% |
子宮頸 | 74.4% |
大腸 | 70.9% |
胃 | 70.2% |
卵巣 | 64.5% |
ぼうこう | 62.6% |
食道 | 47.8% |
肝細胞 | 45.1% |
膵臓 | 12.7% |
がんの罹患者数は全体として増加傾向にあるものの、生存率は多くの部位で上昇傾向にある。
がん患者増加の要因としては高齢化や生活習慣、食生活の変化によるものが挙げられる。
また生存率の上昇の要因としては、医療体制の進化や検診などによる早期発見・早期治療によるものが考えられる。
(参考資料)
がん情報サービス HOME:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)
がん登録・がん対策基本法
「がん登録」について
厚生労働省において「がん登録推進法」(2016年施行)に基づき、の罹患や転帰(その後)の状況などを把握、分析すし、がん患者の全数把握、がんの罹患率や生存率、がん検診の受診率などの情報を一元化したもの
2016年の施行より国が中心となり「全国がん登録」が実施されるようになった。
※過去問 第30回 問9より
(問題)地域がん登録は、がん死亡の全数把握を目的としている
(解答) × 死亡の全数把握ではありません

がん登録はがん患者の全数把握や
生存率や受診率などがんに関するすべての情報を一元化します
「がん対策基本法」について
がん対策の推進を目的とした法律である。
また、がん対策推進計画は「がん対策基本法」に基づいて行われます。

※以上の「がん登録」や「がん対策基本法」は過去5年間において出題されていませんが、がんに関連する法規において関わってくる重要な言葉なので一緒に覚えておくと良いかもしれません。
ピンクリボン運動

ピンクリボン運動って聞いたことありませんか?
乳がんの検診の推進や早期発見などを掲げた啓発活動です。
アメリカで始まった活動で、日本においても乳がんが上昇傾向になっています。
また乳がんは自己検診で発見できる可能性があります。日頃からセルフチェックしておきたいですね。
はじめよう!月に一度のマンマチェック | 認定NPO法人 J.POSH 日本乳がんピンクリボン運動 (j-posh.com)

毎年がん検診は受診してますが
がんの罹患の推移などを見ていると
早期発見はやはり大切だな、と改めて感じます
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